フードデリバリーの先進国として知られる韓国のクラウドキッチン「WECOOK」が日本に初上陸。Green Diningでは「KITCHEN WAVE五反田」という名称で2021年10月オープンしたキッチンを訪問し、担当役員、野口さんに取材しました。韓国でのナレッジが活用できる、ユニークで、今後の躍進が楽しみなキッチンです。
オープンの背景
コロナ禍でニーズが更に高まるデリバリー領域に特化したい飲食事業者に「場」と「機会」を提供するため、韓国にてクラウドキッチンの先駆者であるWECOOKと、シェアリングエコノミーを軸に課題解決を目指す株式会社ガイアックスが手を組み、株式会社WECOOK Japanを設立。クラウドキッチン先進国である韓国の知見や経験を取り入れた事業を開始しました。
KITCHEN WAVE五反田の特徴
いくつか特徴の備えたキッチンですが、主に3点が挙げられます。
1)フードメーカーの成長にコミットする点
KITCHEN WAVEでは、クラウドキッチンを利用して飲食事業を始める人を「フードメーカー」と呼ぶそう。「入居は事業のスタートにすぎない」と野口さんは言います。フードメーカーと共に事業を成長させていくモデルとするために「毎月の入居料を格段におさえ(家賃、内装費、最新厨房設備、共益費含み月額12.5万円)、売上に応じたレベニューシェアに比重を置くモデル」を導入しているところが他のキッチンとは大きく異なります。そうすることで、キッチンオーナーもフードメーカーも共に成長するために必要な支援は何かを一緒に真剣に考えるようになるという仕組みです。例えば、キッチン施設にあるラウンジで勉強会を入居者とともに開催する、KITCHEN WAVEとしてもPRを積極的に行う、売上向上ための施策を一緒に考える、施策を打った後、結果を一緒に追い共有する、など、ビジネスの成功率を上げてもらうための施策を数々用意しています。マーケティング専任者も置いています。リアルタイムでのデータを見ながら、売上がいまいち、という日には、割引クーポンをつけて販売する、といったことを行っています。
2)韓国ナレッジがある点
これは、大きな利点の1つであり、他キッチンとの差別化要素のひとつです。フードデリバリー事業に関して、日本より4-5年進んでいると言われる韓国で実績を積んできたWECOOKからナレッジが共有されるため、韓国で無駄だった施策はやらない、うまくいったことをまずは日本でも試す、という効率よいオペレーションが出来るようになっています。韓国で培ったノウハウを日本市場にローカライズしていき、ノウハウを入居者に提供する仕組みがあります。事業開始時に活用できるフレームワークもKITCHEN WAVE五反田では取り入れている、とのこと。入居者であるフードメーカーが自分のステージにあった支援を選択して受けられるようになっています。
3)キッチンスペースが広く環境が良い点
「これは多くの方から言われることですが、キッチンスペースが広めの設計となっていることも特徴の1つ」と野口さんは言います。この環境設定は、韓国WECOOKからの経験を取り入れたものだとか。デリバリー拠点となるクラウドキッチンでは、取り込むお客様はネット上のお客様がメインとなるため、路面にキッチンを出す必要もなく、キッチンそのものも狭めであることがほとんどです。戦略は各社それぞれだと思いますが、KITHCHEN WAVEでは、フードメーカが活動拠点でのびのびと活躍出来るよう工夫のひとつとして環境空間設計を重要視しています。快適に仕事が出来るような空間を提供しているのです。
現在の入居者について
キッチンは4つあり、3つは貸し出し、1つは自社直営の実験店舗用に使っています。貸し出しする3つのキッチンはすでに入居が決まっており、2つがゴーストレストランとして実績がある会社、残り1つは今回デリバリー用メニューの開発から行う会社です。2021年11月現在、合計15もの業態数(ブランド数)をこのキッチンから出しており、日本での第一号店として良い成功例にすることを目指していることが伺えます。
自社のキッチンには「管理栄養士の資格を持ち、HACCAPの管理手法を理解し、365日、学生寮の食事を作っていたガッツある料理人に来てもらった」とのこと。「自分たちで運営してこそ、この事業に対しての深い洞察が得られると思っています」と野口さんは意気込みます。「入居者同士、交流の機会を作り、何をするとお客様に喜んでもらえたか、売上が上がったかという情報を共有する場にしていきます。今回はたまたま飲食経験者の入居ですが、この先は、デリバリーに出すメニューがまだ決まっていない人でもチャレンジできるようフランチャイズ展開をしたり、教育プログラムを提供したりしていきたいです」との意気込みでした。
今後について
このKITCHEN WAVE五反田の日本第一号拠点を皮切りに、今後は、商圏リサーチを行ったうえで、名古屋、横浜、川崎など他の地域へもキッチンを出していくことを考えているそうです。まだ始まったばかりの事業ですが、5年以内に全国の主要都市で35拠点に増やすことを計画しているとのことです。
取材を終えて
様々な施策を用意し、入居者であるフードメーカーと共に成長していきたい、という観点から、レベニューシェアモデルを採用しているKITCHEN WAVEのお話は興味深いものばかりでした。「KITCHEN WAVE 五反田を日本第一号拠点として、このWECOOKを広め、事業を皆で盛り上げていきたい。せっかく、このように韓国WECOOKと提携しているのだから、韓国の食文化もこれを機会にもっと日本で広めていきたい」と目を輝かせて話す野口さんが印象的でした。需要が高まりつつあるフードデリバリーサービスの業界において、KITCHEN WAVEから創造され、発信されていく「新しい食体験」への期待は高まるばかりです。
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